富田染工芸
明治時代から140年間、5代にも渡り東京の染小紋を継承し、江戸小紋・江戸更紗を染めてきた「富田染工芸」。
古くから継承されてきた伝統の技は、和装だけでなくネクタイやスカーフ・ハンカチなどに形を変え、国内外から注目されるブランドと成長しました。
今回は、富田染工芸の歴史とこだわりをご紹介いたします。
富田染工芸の歴史
富田染工芸は、東京・新宿の地場産業である「東京染小紋」と「東京更紗」を伝統技として継承しています。
東京の染工芸と聞くと意外に思われるかもしれませんが、東京は京都・金沢に並ぶキモノの染色三大産地の一つです。
染色には良質な水が必要となるため、江戸時代には神田川から隅田川にかけて多くの染色業者が存在していました。
明治時代以降になると、高度経済成長の影響で川の水質が悪くなってしまったため、神田川の清流を求めて早稲田に染色業者が集まり、地場産地として根付きました。
富田染工房は、明治初期に浅草・馬場で初代が創業し、大正3年に早稲田に移転しました。
伝統と技を継承し、創業より使用されている12万枚もの型紙を使用して染小紋を行っています。
東京染小紋と江戸更紗とは
東京染小紋は、生地に防染の糊を乗せて柄を付けた後、型紙を使用して地色を染めて柄を染め抜く技法です。
遠くから見ると無地に見えますが、近くで見ると柄が浮き出てくるように見えます。
一方、江戸更紗は型紙と刷毛を使用し、生地に直接色を刷り込んで染めていきます。
江戸更紗はグラデーションのようなぼかし表現をすることが可能で、何色にも染め分けられているのが特徴です。
東京染小紋は、室町時代に大名が参勤交代で江戸城に上がる際、藩を識別するために文様を武士の裃(かみしも)に入れたのが始まりです。
東京更紗は、インドから発祥した文様で、室町時代に渡来し、江戸時代末期に染と更紗の技術が合わさり生まれた技法です。
Sarakichiとは
Sarakichi(さらきち)は、東京染小紋を使用したファッション小物ブランドです。
日本の伝統的な染工芸で仕立て上げられた小物は、国内外から高く評価されています。
富田染工芸のこだわり
江戸時代から続く染小紋の老舗「富田染工芸」。
長く続く伝統の技法には、こだわりがありました。
そのこだわりをご紹介いたします。
10年以上の修行期間
江戸小紋は、前述したように型紙を使用して布地に防染の糊をのせて柄をつけた後、地色を染める「しごき」と呼ばれる作業を行います。
この作業で使用される型紙は約30cm程度のため、一反(約13m)の布を染めるには、何度も繰り返し染める必要があります。
一枚の型紙を使用して、隣り合う柄を紡ぎ合わせ、更にムラなく糊をのせる作業は難しく、熟練するまで10年以上かかります。
12万枚以上もの和紙の型紙
冒頭で紹介した創業当初から使用される12万枚もの型紙は、三輪和紙に柄を彫刻したものです。
三輪和紙は水に強い美濃の手漉き和紙を渋柿で2,3枚貼り合わせることで、何度も繰り返し糊をのせて捺染加工と水洗いを繰り返しても、江戸時代より継承され続けることができました。
現在も創業当時から保存されている12万枚もの型紙の一部を使用して、染小紋を行っています。
SARAKICHI 商品
130年以上の歴史とともに着物を染め続ける富田染工芸が展開する
ファッション小物のブランド SARAKICHI (さらきち)
着物の歴史とその伝統技術を基軸に現代に流れを乗せた新しいスタイルの商品です。
1.ネクタイ
いつものスーツに特別感を演出する、小紋柄ネクタイ
粋の代名詞ともいえる江戸っ子は「さりげないお洒落」を好んだ。
そんな彼等がこぞって身に着けたのが、「江戸小紋」。遠目に見ると無地にしか見えないのに
実際は小さな柄が無数に連続した江戸小紋は、職人がひとつひとつ手彫りした型紙から染め抜いた
まさに芸術品ともいえる染物。その小紋で作ったのが富田染工芸のネクタイ。
表のシンプルな柄と裏面に派手ながらを隠し持った粋なデザイン。
また国産シルクにこだわったその質感は、独特の上品な光沢を放つ。
海外メゾンも認めた今に生きる江戸の粋
江戸のファッションの最先端として発展した着物の型染めの一種 江戸小紋。
伝統の技術を守り続けているのが富田染工芸。五代目社長 富田篤さん曰く
「ただ伝統を継承するだけでなく、流行りに敏感だった江戸っ子が小紋をこぞって着たように、
現代のお洒落な方々が身に着けたいと思えるような商品を作ることが、私の使命だと思っています」と話す。
その言葉通りデザイナーとのコラボ企画として生まれた商品は現代にも馴染む粋な商品となっています。
2. 蝶ネクタイ
江戸小紋とモダニズムの融合が斬新でユニークな作品となっている。
3.ハンカチーフ
オーナーの富田さんも手間がかかりすぎるというSarakichiのチーフ
ネクタイや蝶ネクタイと柄を合わせたい一品